保険代理店のための分かりやすいDX 18
DX人材の育成には高いハードルも
保険代理店におけるDX人材の採用は難しく、育成や外部委託が現実的な解決策と考えられますが、皆様のところではDX人材の育成は進んでいるでしょうか。時代の要請に伴いDXも進化し、生成AIの出現によって、生産性向上や社会問題解決への期待が高まっています。
経済産業省では、デジタル時代の人材政策に基づき、「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方2024」を取りまとめました。具体的には、以下のような人材・スキルが求められています。
①生成AIの業務での活用により知識や技術が補填されるため、DX推進人材はより創造性の高い役割としてリーダーシップや批判的思考などパーソナルスキルやビジネス・デザインスキルが重要となる。
②DX推進人材には「問いを立てる力」や「仮説を立て・検証する力」、に加えて「評価する・選択する力」が求められる。
③求められるスキル
・ビジネスアーキテクト:選択肢から適切なものを判断する選択・評価する力
・デザイナー:独自視点の問題解決能力、顧客体験を追求する姿勢
・データサイエンティスト:利活用スキル(使う、作る、企画)、背景理解・対応スキル(技術的理解、技術・倫理・推進の各課題対応)
・ソフトウェアエンジニア:AIスキル(AIツールを使いこなす)、上流スキル(設計・技術面でビジネス側を牽引)、対人スキル
・サイバーセキュリティ:AI活用の利益とリスク評価、社内管理スキル、コミュニケーションスキル
また、今後の経済産業省の対応として、「デジタルスキル標準(DSS)」の見直し、「デジタルガバナンス・コード」の見直し、AI学習機会の裾野の拡大、生成AI時代に求められる継続的な学びの実現に向けた環境整備に取り組むとのことです。この分野のテーマは、今後も適宜フォローしていく必要があるでしょう。
とはいえ、社員数が20名未満の保険代理店には、これらの課題は難しいかもしれませんが、保険業界の大企業や先進的な代理店等に習い、少しずつ前進することが求められます。
短期での成果は期待しない
例えば、SOMPOグループでは、全社員がDXを推進する上で必要な人材であるという理念のもと、「人を変え、仕事を変えて、会社を変えていくこと」を目指し、2021年度からデジタルワークシフト(デジタル人材育成)を実施しています。
DXを実現するために必要な能力は多岐にわたるため、全社員を、
1.高度な専門スキルを有する「DX専門人材」
2.デジタル施策を企画し、DX推進の核として組織を牽引する「DX企画人材」
3.デジタルを活用して顧客への価値提供を担う「DX活用人材」
のつの3区分に分類し、それぞれの役割に応じた研修を実施しています。
「DX企画人材」が企画したものを「DX専門人材」が実現し、「DX活用人材」が活用する、というサイクルを循環させ、グループ全体のDXを加速させています。
SOMPOグループの事例が示すように、DX推進は短期で成果を得るものではありません。時代の変化に対応するためには、長期的に人・仕事・会社を変革する必要があります。経営者は、まず従来の経営手法やビジネスモデルを見直し、デジタル化の重要性を理解することに努めていきましょう。
▼保険代理店のDXはエムアイシーへ
https://www.viewsystem.info/
第3337号(週刊) 新日本保険新聞[損保版]2024年9月23日